With Their Boots.

デジタルスカウティングツールWyscoutは現役選手をもサポートする(SKY)

各国リーグの試合映像を網羅し、さらにそれらを選手やプレイの種類ごとにタグ付けし、各種スタッツと共に公開している有料会員制スカウティングツールWyscout(公式HP)。その有用性は今や世界中のクラブや代理人にとってお馴染みのものとなりました。その波は現役の選手にまで及んでいるようで、チェルシーに所属するブラジル代表ウィリアンも自身のパフォーマンスをチェックするために利用しているという記事がSKYに掲載されていました。今回はその記事をざっくり訳しました。元記事はこちら


Wyscoutは2004年の公開以来、新戦力のスカウティングを人間による目利きからデジタルなモノへと変貌させる過程で重大なパートを担ってきた。そして今、ウィリアンのようなトッププレイヤーまでもが活用している。

 

プレミアリーグにおける95%ものクラブがトレーニングオフィスでWyscoutを使うことで快適に世界中の選手のスカウティングを行っている。そして、それは87の国と地域におけるトップリーグでも同様の光景である。

 

Wyscoutはパソコン、携帯電話、タブレット端末で各国500以上のリーグの選手データと映像を閲覧することが出来る会員制サービスであり、ユースやセミプロのレベルまでカバーしている。

 

クラブのスカウトや代理人はこれを用いて選手の成長を追っていく。次世代の有望株を継続して見続けることも出来るし、必要があれば新たなターゲットを探すことも出来る。

 

CEOのマッテオ・カンポドニコは、今年の1月に行われた移籍交渉の大半はWyscoutから始まったと信じている。そして、Skyスポーツとの独占取材において「目当ての選手を最初に見る場所はフィールドからWyscoutになりました。移籍交渉の世界に、ある種の民主主義を持ち込んだと言えるでしょう。全てのクラブが世界中どんな選手であっても見ることが出来ます。」と語った。

 

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[WyscoutのCEOマッテオ・カンポドニコ氏。大学卒業後、IT系企業就職を経て2004年にWyscoutを起業した。]

 

「実際に選手のプレイを見ずに獲得した、とクラブの人が言っていたのを覚えています。移籍市場のラスト数日ではよくある話です。選手を見る時間なんてありませんからね。誰かの評判を信頼するしかないのです。しかし今では、選手のプレイを見てから信頼をすることが出来るのです。」

 

所属選手達にパフォーマンスデータを見せるクラブもいくつかある。レスターは早いうちからこういった取り組みをしたクラブの一つで、2015/16シーズンにリーグ優勝をしたときには大きな助けとなった。レスターは選手達にiPadを支給し、試合やトレーニングでの映像を見せたり、新加入の選手への事前説明にも使ったりしていた。

 

しかし、現在は選手が自身のパフォーマンス分析をする時代だ。チェルシーのウィリアンはWyscoutを用いて自身のパフォーマンスを確認するエリート選手のうちの一人である。彼は試合で出した全てのパス、全てのインターセプション、全ての空中戦、全てのスローインを映像で見ることができ、そこから学ぶことで成長につなげている。

 

対戦相手についての事前準備にも用いることが出来るし、他のリーグで活躍する選手を見て学びを得ることも出来る。さらに、ウィリアンの父であるセベリーノ・ダ・シルバも息子のプレイをフォローするためにWyscoutを使っている。彼は「Wyscoutは全てのプロサッカー選手にとってパーフェクトなツールです。息子のパフォーマンスを確認するために必要なことが全て詰まっています。そして、それはブラジルだけでなく全世界の選手にとっても同様でしょう。」と語る。

 

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[Wyscoutに公開されているウィリアンの情報ページ。詳細な個人スタッツや試合中の各種プレイ映像を見ることが出来る。]

 

プロだろうがアマチュアだろうが全てのフットボーラーがWyscoutのアプリをダウンロードして自身の成長に役立ててほしいというのが、Wyscoutが持つ野望だ。

 

カンポドニコは「コーチがビデオを使って私を指導してくれたのがWyscout開発のきっかけです。マルコ・ファン・バステンロベルト・バッジョの映像を使っていました。コーチが私に見せてくれた全ての動きを覚えていますよ。こういったインタラクティブなやり方についても研究しています。Wyscoutは今や世界中全ての選手にとっての教材です。新しいアプリを公開して以来、我々はこのアイデアを発信してきました。」と語る。

 

ジャーナリストたちもまた、Wyscoutを利用し始めている。特に移籍関連の話題の場合、一般的には情報は様々なソースから断片を集めて、それらをジグソーパズルのように統合することで記事を作る。

 

Wyscoutはその作業の助けにもなる。例えば、各指標に基づいて選手を順位付けするパワーランキング機能は検索機能付きで情報を提供してくれる。各局のリポーターにクラブが狙う選手のタイプについて学ばせ、彼らに適切な質問が出来るようにする。

 

試合の分析を行う解説者の助けにもなる。ベースとなるデータはWyscoutから得られるので、あとはそれを視聴者の興味を引くように加工するのだ。

 

「ジャーナリストが、コーチが行うように試合の分析を行うのは当然のことになりました。TwitterInstagramを開き、スタッツを確認するのも普通のことです。このレベルのフットボール分析は今や世界中、どんなレベルのリーグでも見られます。これら全てが、我々が担う分野なのです」とはカンポドニコの言である。

 

「2015年から我々はデータに関する大きな製品を始めました。クラブ、コーチ、スカウト、ゴールキーパーコーチ、代理人、ジャーナリストに向けて作ったものです。データは重要ですが、それだけでは不十分です。フットボールを理解するためには映像が必要だと我々は確信しています。Wyscoutにある新たな製品のほとんどは、データとビデオを融合させたものです。」

 

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[Wyscoutの製品紹介ページ。代理人向け、スカウト向け、選手向けなど様々な顧客向けに最適化されたプランの中から必要に応じて選択する方式だ。全ての国、リーグの映像にアクセスできるプランは月額300ユーロ。]

 

SKYスポーツがマッテオ・カンポドニコに取材をしたのは、彼のホームタウンにしてWyscout創立の地でもあるキアーヴァリにあるWylabだ。Wyscoutはそこでノイズフィード(クラブ、メディア、ジャーナリストなど様々な媒体から出ているニュースをまとめて閲覧できるサービス)などのスタートアップ企業の手助けをし、彼らに足掛かりを提供している。

 

カンポドニコは語る。「現代フットボールの最高峰では、我々は素晴らしい仕事をしてきました。しかし、当たり前のことですが立ち止まることはあり得ません。もっと何かをしたい。夢はまだ終わっていません。我々が起業したとき、フットボールの世界にいる全ての人にWyscoutを使ってもらえたら最高だと夢見ていました。いつか世界中にいる全ての選手にWyscoutを使ってほしいですね。」