With Their Boots.

フランクフルトが描く欧州挑戦への道筋(DW Sports)

CL・ELの出場権が懸かる2位以下が非常に混沌としている今季のドイツ・ブンデスリーガ1部。本記事執筆時点で2位シャルケから6位RBライプツィヒまでが勝ち点4差にひしめく大混戦の中、日本代表のキャプテン長谷部誠擁するフランクフルトは現在4位。実は昨季もフランクフルトは途中まで3位に付けながら史上稀にみる大失速を犯し、二桁順位になってしまった苦い経験を持ちます。「じゃあ今季も危ないんじゃないの?」という疑問に答える記事がドイツのスポーツニュースを英語で発信してくれるDW Sprotsに載っていたので訳しました。元記事はこちら


 

ホームのコメルツバンク・アレナでハノーヴァーを1-0で下したことにより、実現すれば6年ぶりとなるフランクフルトのヨーロッパ挑戦のチャンスはさらに大きくなった。バイエルン・ミュンヘンが首位を独走する裏で行われている熾烈な2位以下の争いにおいて、フランクフルトは4位に位置している。

 

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[第25節終了時点の順位表。フランクフルトはシャルケドルトムントに次ぐ4位につけている。]

 

実は、イーグルス(フランクフルトの愛称)は昨季も似たようなポジションにいた。去年の彼らは19試合を終えた段階では3位につけていたが、そこからシーズン終了まで一勝も挙げられず、最終的には順位表の下半分に属することになってしまった。フランクフルトのファンにとって唯一の慰めとなったのは2006年以来となるDFBポカール決勝進出だったが、そこでもドルトムントに2-1で敗れた。

 

今季のフランクフルトは、欧州への返り咲きを狙うシャルケレヴァークーゼンなどと共に激しいチャンピオンズリーグ及びヨーロッパリーグ出場権争いに身を投じている。そんな中で、スポーツダイレクターのフレディ・ボビッチと監督のニコ・コヴァチイーグルスが昨季の二の舞を演ずることがないよう歩を進めてきた。

 

 

<選手層に裏付けられたアグレッシブさ>

 

昨季、コヴァチ率いるフランクフルトはアグレッシブなフットボールでリーグを盛り上げた。ハードなタックルを繰り出し、ボールの即時奪還には並々ならぬ熱意を持っていた。しかし、このアプローチはしばしば彼らを困難に陥らせた。84枚のイエローカード、6枚のレッドカードはどちらもリーグ最多の数字であり、ディシプリン(規律)の欠如は大量の出場停止につながった。コヴァチはピッチ上においてもベンチ内においてもフルメンバーを揃えることに苦しんでいた。

 

今季の彼らから苛烈な守備が消え去った訳ではない。しかし、ダイレクターのボビッチは、監督には十分な選手層を保証する。また、フランクフルトは悪い結果から立ち直る強さを備えたチームでもある。フランクフルトは今季7敗を喫しているが、敗戦直後の試合には全て勝利している。

 

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[今季のフランクフルトは連敗しないチームである。]

 

フランクフルトの選手層の厚みは日曜のハノーヴァー戦によく表れていた。コヴァチ監督はディフェンダーのマルコ・ルス、ミッドフィールダーケヴィン・プリンス・ボアテング、ミヤト・ガチノヴィッチらレギュラー格の選手をベンチに置いた。ディフェンダーのシモン・ファレットが前半のうちにイエローカードを貰うと、後半頭からマルコ・ルスが投入された。ボアテングとガチノヴィッチも交代で出場し、イーグルスをしっかり勝利に導いた。

 

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[15/16シーズンの終盤からフランクフルトを率いるニコ・コヴァチ。現役時代はクロアチア代表として83試合に出場。]

 

このような贅沢な選手起用はコヴァチがフランクフルトに来てから経験したことがないものだ。そして、フランクフルトをヨーロッパ挑戦に導くうえでも大きな助けとなるだろう。

 

 

<偏りの少ない攻撃>

 

何年にもわたり、フランクフルトの攻撃はアレクサンダー・マイヤーのゴールに依存してきた。しかし今季は、4ゴール以上を挙げている選手がチームに5人もいる。これは2009/2010シーズン以来のことである。

 

セバスティアン・ハラーは8ゴールを挙げてチーム得点王だが、6試合連続で得点が無い。それでもフランクフルトはその6試合から4勝をもぎ取ってきた。

 

いくつもの選手からゴールが飛び出すチームは安定して強い。アントニー・モデストを失ったケルンの状態を思えば納得できる話だろう。

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[昨夏ユトレヒトから加入したセバスティアン・ハラー。今季ここまで公式戦28試合出場で12ゴール6アシスト。]

 

<報われた我慢>

 

フランクフルトはガツガツと当たりながら守るチームにしてはパスを賢く、それでいてダイレクトに使う。今季の彼らは1試合あたりのパス本数ではリーグ13位だが、アシスト数では6位につける。これは彼らが用いるパスがいかに効果的を示している。マリウス・ヴォルフは好例で、彼はチーム最多の6アシストを記録している。

 

しかし、我慢はパスにのみ当てはまる話ではない。選手個人についても言えることだ。ディフェンダーのダニー・ダ・コスタやフォワードのルカ・ヨヴィッチは出場機会を待ちわびていた。そして、ひとたびチャンスが来ると両者はそれにしっかり反応してみせた。ダ・コスタは最近4試合に続けて先発出場しており、ハノーヴァー戦では決勝ゴールを挙げている。ヨヴィッチは今季4試合しか先発出場していないが、4ゴールを決めている。そのうち2点は交代出場から決めたものだ。

 

もしもフランクフルトがこの調子を維持することができれば―そして、周囲のビッグチームの不調が続けば―彼らのヨーロッパ挑戦は現実的な話になる。